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札幌高等裁判所 昭和29年(ラ)58号 決定 1954年12月28日

抗告人 長谷電器株式会社 代表者取締役 長谷敬三郎

訴訟代理人 大塚守穂 外一名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人は、原決定を取消す、との裁判を求め、その理由は別紙記載の通りである。

よつて按ずるに記録によれば、抗告人は、その申請にかかる旭川地方裁判所昭和二十九年(ヨ)第五四号処分禁止の仮処分申請事件について同年四月一日同裁判所より、本件電気器具等の動産に対する被申請人川崎礼二の占有を解き、申請人の委任する旭川地方裁判所執行吏滝川正一に占有保管せしめる、との及びその他の趣旨の仮処分決定を得て同日同執行吏にその執行を委任したところ、同執行吏において同日右仮処分の執行をなし、訴外西倉合資会社倉庫内にある右動産の占有をなしたが、本件動産は電気器具等の数百点の商品であつてそのままこれを同倉庫内に於いて保管するのを適当とするのでその保管の方法としてこれを同会社に寄託して保管せしめたこと、而して同執行吏は右動産の保管料として同会社に対し毎月金二万四千円を支払わなければならないので抗告人に対しこの費用の予納を命じたが抗告人は全くこれを予納しないので、やむなく同裁判所において民事訴訟法第七百五十四条第二項の規定を準用して同年十一月二十四日本件仮処分の執行を取消す旨の原決定をなしたものであることが明らかである。

而して同条同項の規定は仮処分の執行についてもこれを準用すべく此の場合には仮処分裁判所が執行裁判所としてその取消を命ずべきものと解せられるところ、本件仮処分の執行について前記の様な事情がある以上同条同項の規定による執行取消の要件を具備しているものと認められる。

抗告人は一、動産に対する仮処分の執行は執行吏の権限に属するからその取消は執行吏がこれをなすべきであると主張するが仮処分の執行を続行するにつき特別の費用を要し且つそのため必要な金額を債権者が予納しないときは、前記の通り執行裁判所が其の取消の裁判をなすべきこと民事訴訟法第七百五十六条第七百五十四条の規定上明白であつて、殊に、仮処分命令の執行についてはその目的物が動産であつても、執行吏は原則的な執行機関ではなく、ただその命令の内容の実現に要する個々の処分について一時的、個々的な権限を有する場合があるにすぎない。本件のように目的物を執行吏の保管に委ねる仮処分の執行に於いては、執行吏が民事訴訟法第七百三十条によりその占有を取得すれば、仮処分の執行は継続するが、執行吏の執行機関としての権限は消滅し、その後は保管人としてこれを保管しているにすぎない従つて仮処分の執行全体にわたる権限は執行裁判所に存するものと言わなければならない。而して前記のように保管人が目的物を保管するについて特別の費用を要する場合も仮処分執行の続行につき特別の費用を要する場合に該当するものと解すべきであるから原決定には抗告人主張の抗告理由一、の点について別に違法はない。

次に抗告人の抗告理由二、の主張は、本件仮処分の執行につき特別の費用を要し抗告人においてそのため必要な金額を予納しなかつたこと以上説示の通りである以上やはり理由なきこと明かである。

されば本件仮処分裁判所が執行裁判所としてなした原決定は相当であるから同法第四百十四条第三百八十四条第九十五条第八十九条により主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 原和雄 裁判官 臼居直道 裁判官 松永信和)

抗告理由

一、本件の如き、有体動産の仮処分事件において執行機関は、申請人の委任した執行吏であり、執行機関でない裁判所が仮処分の執行を取消すことはできないものである。

本件の如く執行機関が執行吏である場合には、執行の続行につき必要なる費用は執行を委任したる執行吏に納付すべきものであつて執行裁判所に納付すべきものでないので裁判所は執行費用に関与し執行の取消決定までなすことは筋道が違うと思料する。

二、本件は執行に当り、予め執行吏と倉庫業者との間の保管料の契約が明確に抗告人に解らず、日時を経過し、意外に高額の倉庫料が掛つているということで、抗告人は後になつてこれを知り、こんなに掛るなら他に安価なる保管場所もあるので、他所に保管して貰えば良かつたし、保管場所の変更をして費用の累増しない様にしてもらいたいと思つて申出ているわけであるが、保管倉庫(西倉倉庫)に対しては定まつた保管料の支払をなすことは当然のことであるから同倉庫に話をして月賦払を以て保管料を支払うことにほぼその了解を得ている。

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